4.四日目(8月22日(月))、松代エリア
7時から朝食。ビュッフェ形式で結構混んでいた。8時30分ホテル出発。
9時30分、大沢トンネルを出たところに着く。T323アート村・鍬柄沢構想:小川次郎/日本工大小川研究室、2016年:休耕田となった棚田に蕎麦の花が咲く道を制作。2030年完成を目指す。国道253で松代農舞台を目指す。
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松代エリア(能舞台、フィールドミュージム)
10時5分、D053松代農舞台の駐車場に着く。まず農舞台の周辺を回る。D063旅人の迷路:歳森勲、2003年:古代ヨーロッパで航海の安全を祈祷するための儀式に使われた「旅人の迷路」の形が多様な植物の庭になった。D064記憶-再生:井上廣子、2003年:楕円の中に玉石を積み、永遠の循環の場を作ろうと考えた。
農舞台の入り口近くにD155ゲロンパ大合唱:田畑から刈られた草を飲み込んで堆肥を生み出すマシーン。D351Camera Obscura Project:浅田創、2017年:ピンホールカメラの原理を体験できる作品。
D359回転する不在:東弘一郎、2021年:「私が元の持ち主の記憶の断片を集めて介入することで時間も歴史も静止してしまった主人のない自転車に、新しい命を吹きこむことはできないだろうか」。D125地震計:オノレ・ドウオー(ベルギー)、2006年:雪をイメージした小さな玉と巨大な釣り竿のようなフォルム。水の循環とバランスを感じさせる。D371花笑む:大谷美香、2022年:希望という太陽に向かい枯れることなく咲く花。大地から途絶えることのない夢を吸い上げ伸びる枝。D374空器の家:長井理一、2022年:大自然の中で光にさらされ風に揺られ夜霧に濡れながら、微妙な時間の推移の中で訪れる人を待つ物体。待っているのは、人類が21世紀に残すかもしれない負の遺産・ペットボトルで構築された「空器の家」だった。
D311円-縁-演:松田重仁、2003年:トーテムポールの傍らに埋められたタイムカプセルを2015年に開封。その後「希望の実」が置かれた。D061花咲ける妻有:草間彌生、2003年:妻有は気高い土地であり、美しい陽光が注がれるこの妻有を賛美したいという思いのもとに造られた花々の野外彫刻。D054まつだ住民博物館:ジョセップ・マリア・マルティン(スペイン)、2003年:農舞台と松代駅をつなぐ連絡通路に並ぶ1500本のカラーバー。旧松代町全住民が参加し家庭ごとに色を選び屋号を書いた。
D060かまぼこアートセンター:小松剛、2003年:豪雪地域特有のかまぼこ型倉庫をリサーチし制作された作品。農具の倉庫として実際に利用されている。D247まつだい郷土資料館:築約150年、江戸時代末期に建てられたけやき造りの民家を利用した郷土資料館。D370妻有に立つ:生け花にとって植物は欠かせない存在である。植物は日々成長し、いずれ枯れ、土に戻る。金属は不変であり、自然の中で育まれた妻有に根付く精神を表す。変わりゆくものと変わらないものに思いをはせる。
城山へ向かう。橋を渡った所にD248イエローフラワー:ジョゼ・デ・ギマランイス(ポルトガル)、2012年:松代「農舞台」、フィールドミュージアムの案内板や芸術祭会場のトーテム状サイン。川に沿って進むとD015西洋料理店山猫軒:白井美穂、2000年:宮沢賢治の童話「注文の多い料理店」を具現化。色鮮やかな8枚の扉が空間を区切る。
山道を進むとD369音による存在の再生:秋山美晴、2022年:麻の素材で杉林に鈴を結び、地域の人々の息遣いを鈴の音色と共に再生させる。石仏が並ぶ道の脇にある。少し戻って細い桟道を進むとD186スペース・スリター・オーケストラ:チャールズ・ピラード(カナダ/日)、2009年:森の中に3台の楽器が置かれている。誰でも自由に音を奏でて楽しむことが出来る。
先に進むとD014雪国の杉の下で:橋本真之、2000年:雪の重みでたわんだ木々の姿を、銅の彫刻で表現。森と一体になった空間を作る。D372妻有でヒミツ基地:かとうさとる、2022年:森の妖精ヒメボタルが飛び交う心象風景をランドスケープとして表現した。
D013あたかも時を光合成するように降りて来た~レッドデーターの植物より:小林重予、2000年:絶滅危惧種の植物をモチーフに彫刻を制作。D012遊歩道整備計画:CLIP、2000年:松代全体の整備を担当。環境に配慮し、点在するアートを結ぶ遊歩道を作った。山の中の桟道もその一部。舗装された道に出るとD011平和の庭:マダン・ラル(印)、2000年:池のほとりに大理石で蓮の花を作った。蓮はヒンズー教の神を意味する。
大小の円をちりばめた舗道を上ると右手の田んぼの中にD010観測所:牛島達治、2000年:ジャングルジムのような構造体の中には上下に伸びた伝音管がある。片方は田んぼの音、もう片方は空の音が聞こえる。道を上り切って車道に出るとD373うねり:千羽里芳、2022年:子供の頃、夢中になってそこら中の土を穿り出した。憑りつかれたかのように、土の向こうに夢を見た。道の脇の草の中に赤い布がうねっている。左折し少し道を下るとD368王国:竹を芯にして藁縄を編み込んだ木の葉状のオブジェを組み合わせて立たせた形の作品。森林内遊歩道の3~4か所に設置し、道しるべとする。森は虫や鳥、精霊たちの王国。車道脇にある作品の一つを目印に細い山道を進むとメインの部分がある。
元に戻り、車道を先に進むと右手にD365手をたずさえる塔、D366手をたずさえる船:イリヤ&エミリア・カバコフ(旧ソ連/米)、2021年:D365は民族・宗教・文化を超えた繋がり、平和・尊敬・対話・共生を象徴する塔。D366はカバコフがデザインした船の上で、世界中の子供たちの絵を組み合わせて帆を作り学ぶプロジェクト。世界各国で実施されている。展示は模型。その右手にD005関係-大地・北斗七星:川口龍夫、2000年:地面に置かれた鉄板には、北斗七星の形があり、2000年の星の位置を示す。
左手にD006かかしプロジェクト:大岩オスカール(ブラジル/米)、2000年:棚田の中に立ち並ぶ真っ赤なかかしは、棚田で働く人やその家族をかたどった。その先左手の道を少し入るとD004水のプール:立木泉、2000年:棚田の跡地に設置された水琴窟。水盤から滴り落ちる水滴がわずかな音色を奏でる。耳が悪いから音に気付かなかった。車道に戻り少し先の右手にD353 hi 8 way:ジョン・フルメ・リング(オランダ)、2018年:2つの螺旋階段を重ねるように組み合わせ無限を表す「∞」を表現。
その先にD003 〇△▢の塔と赤とんぼ:田中信太郎、20000年:青空に羽ばたくランドマークとして造られた赤とんぼの彫刻。D184リバース・シティー:パスカル・マルティン・タイユー(カメルーン/ベルギー、仏)、2009年:地面から約2mの高さから逆さに吊るされた大きな鉛筆の群れ。1本1本には世界の国や都市の名前が書かれている。
さらに降ると右下に2つの作品が見える。D002砦61:クリスチャン・ラビ(仏)、2000年:棚田の傍らに、黒い木が集落か群像のようにそそり立つ。D375植物に語らせるもの:日向洋一、2022年:植物との良好な関係は、果たしてこれからもずっと続くのだろうか。植物の未知なる力は、コロナの比ではないだろうから。
農舞台の駐車場に戻り、車で城山の中腹の駐車場へ。D311:農舞台の周辺にあったのと同様のもの。車道脇にD376かかしコンクール:深川資料館通り商店街協同組合、2022年:東京の深川資料館通り商店街で毎年開催される「かかしコンクール」の応募作からユニークなかかしたちが、越後妻有の棚田を守りにやって来た。駐車場の向かいから細い山道を進むとD068フィヒテ(唐檜):トビアス・レーベルガー(独)、2003年:「深い森」に例えられるドイツの思想・文学を森の図書館として表現した。
急な坂道を城山の頂上を目指して登る。途中に管理棟があり、公園になっている。東屋で一休み。ちょっと先にD016木:メナシェ・カディシュマン(イスラエル)、2000年:1本の木の形がくり抜かれた鉄板を設置。くり抜かれた空間が周囲の景色を切り取る。D067融(とおる):柳沢紀子、2003年:楕円形のモザイクは御影石に15万個のピースを埋め込んで作り上げ、レリーフには鉱石やアンモナイトが描かれた。休憩所の下の池の向こうにある。休憩所を出て山道を登ると途中にD070まつだいスモールタワー:ペリフェリック(仏)、2003年:タワーは地面から屋上まで4階建て。屋上は展望台。酷暑の中汗まみれになって上るのはきつい。木陰に入って風を受けるとホッとする。
頂上の松代城に着く。D377憧れの眺望:エステル・ストッカー(伊)、2021年:無意識に目線が奪われる。知覚した空間が圧倒的な量感をもって既成概念に襲い掛かる。時・場・心・・・これらがもつ歪を自由に行き来させる。2階にはD378聚楽第:豊福亮、2021年:銀箔を施した張り詰めた空間の中心に金箔を施した金の茶室がある。その絢爛な姿で客人を静かに待つ。3階にはD379脱皮する時:鞍掛純一+日大芸術学部彫刻コース有志、2021年:「黒く塗られた天井と壁は自らの姿を映し出し、四方に開かれた丸窓からは、四季折々の風景を一望できる。彫り尽くされた床からは、足裏から体感する感覚が一つの間にいることを再確認し、金箔の貼られた礼盤に座ると、静かな時間に様々な思いを巡らせることが出来る。
山を下る途中管理棟でアイスキャンデーを買い一息つく。農舞台の駐車場に戻り、農舞台に入る。D363プロジェクト宮殿:イリヤ&エミリア・カバコフ(旧ソ連/米)、2021年:旧ソ連に住む架空の人々のプロジェクトを保存する博物館として構想された。D362 10のアルバム迷宮:イリヤ&エミリア・カバコフ(旧ソ連/米)、2021年:旧ソ連時代の1970から74年にかけて制作された。10人の夢想家を主人公とする物語とドローイングが描かれたアルバムを迷宮のような形状の台座の上に置き、物語の世界に没頭できる仕掛けにしている。D364アーティストの図書館:イリヤ&エミリア・カバコフ(旧ソ連/米)、2021年:この図書館には限定版のアーティストブックや書籍が置かれており、それを鑑賞することが出来る。アーティストブックにはカバコフ作品にまつわるドローイングや写真などが掲載されている。D380自分をより良くする方法:イリヤ&エミリア・カバコフ(旧ソ連/米)、2021年:「毎日、一定時間天使の羽を背に付けて部屋にこもることで、より良い人間になろうとする計画」の提案。農舞台の向かいの里山にD001棚田:イリヤ&エミリア・カバコフ(旧ソ連/米)、2000年:棚田の中に農作業をする人々の姿をかたどった彫刻が置かれている。14時45分出発。
14時松之山エリアの黒倉に着く。Y113パレス黒倉:藤堂、2022年:1階には冬の妻有のように静かなインスタレーションを、2階には忘れられた時間の重なりを感じるような作品を配置。窓越しに緑と光を感じられる、展望室のような空間も制作。14時30分出発。
松代エリア北部
14時45分室野の中国ハウスに着く。D344五百筆:ウー・ケンアン(中国)、2018年:500人の筆になる文字などを切り絵のように壁天井など一面に張り付けた作品。
D381心・顔:ウー・ケンアン(中国)、2021年:スクリーンの前で立ち止まると、顔の特徴や表情が順次キャプチャーされ、リアルタイムで数百の神話に基づくイメージからなる、色鮮やかな巨大な顔へ変換される。14時55分発。
14時55分旧奴奈川小学校に着く。D331奴奈川キャンパス:2015年リニューアル。D338はなしるべ:鞍掛純一、2018年:作品が施された手漕ぎのトロッコ。子供たちが遊んでいた。D332大地のおくりもの:鞍掛純一+日大芸術学部彫刻コース有志、2015年、2018年:奴奈川キャンパスのエントランスホール側面全面に木材を張り、彫刻によって森を出現させている。D334レミニッセンス(おぼろげな記憶):ターニャ・バダニナ(露)、2015年:学校に残された標本や実験道具などを展示した収蔵庫のような博物館。D340南極ビエンナーレ-フラム号2:アレキサンドル・ポノマリョフ(旧ソ連)、2016年:2017年に開催された南極ビエンナーレの、未来の生活を想像させる空間を設える。D341天井大風:コウ・ユウ(中国)、2018年:良寛の書が書かれた紙を、子供たちが凧にして遊んだという逸話を元に、書の凧を揚げる。D348彩風:ウー・ケンアン(中国)、2017年:約1000個の金属を切り抜き着色したパーツを組み立てたモビール。D383パラダイス:ツアイ・ツアンホアン(中国)、2022年:パンデミックによる隔離体験から生まれた様々な思いを再現した作品。D384水の博物館:ジャネット・ローレンス(豪)、2022年:「日本は水が豊かな国です。作品のコンセプトは体験型のガラス器具で反射する「水の博物館」という形式で、日本を表現することです」。15時25分出発。
15時45分旧小貫集落到着。D382消えた集落 閉村の碑からよみとるもう一つの理由:礒辺行久、2022年:平成4年に閉村となった旧小貫集落の在りし日の状況を、各家の屋号を四寸柱に記号として設置、この地の最も特徴的な過酷な自然現象の一つとして冬季の北西の季節風の証として吹き流しを設置。
15時55分旧莇平小学校に到着。D103明後日新聞文化事業部:日比野克彦、2003年~22年:日比野を社主として廃校を本社に発足、芸術祭や地域情報を伝える新聞を発行。16時10分出発。
16時15分田野倉に到着。D385楽倉D.I.Y.の家iju:石松丈佳、2022年:D.I.Y.をキーワードに移住者と集落住民が楽しく暮らす支援を行う施設を目指す。16時35分出発。
田野倉に到着。D382つんねの家のスペクトル:アネット・メサジェ(仏)、2015年:築150年の空家に9つの作品を展示。はさみや包丁などを柔らかにぬいぐるみにして梁から吊るし、インスタレーションを展開した。
16時45分会沢に到着。D386山の奥海の底:蓮池もも、2022年:美しく豊かな自然の営みや巡る季節に寄り添う人々の暮らしを、絵葉書やモビール、影絵にして展示。16時50分出発。
16時55分旧清水小学校に到着。D387妻有アーカイブセンター:これまでの大地の芸術祭の全ドキュメント、川俣正の1980~2005年の活動資料を保存。資料は閲覧可能。さらに川俣正の活動拠点となるアトリエギャラリーも初公開。D358ジャパン・フォーカス・ライブラリー&ショプ/カワマタ・パブリケーション・タイムラン:edition.nord、2022年:川俣正アーカイヴの出版物をリサーチし、時系列的にディスプレイすることによって、活動の歴史を視覚化/ライブラリー化する。D388スノーフェンス:川俣正、2022年:建物のファサードに、工事用フェンスを横向きに使い、冬場のイメージで、建物の外壁に沿わせた形で設置されている。17時10分出発。
18時30分越後湯沢駅到着。駅ビル内の小嶋屋で天ぷらへぎ蕎麦を食べる。
越後湯沢19時38分発ときで20時56分東京着。横須賀線に乗り継ぎ東戸塚へ。無事帰着。
(終わり)
つぎは中断していた「旅の絵日記:2008年ドイツ 15」に戻る予定です。