はじめに
秋の会期終了間際の11月2~6日、瀬戸内国際芸術祭2022に行ってきました。瀬戸内国際芸術祭は、2010年の第一回から三年ごとに開催され、「海の復権」をテーマに掲げ、アート作品と瀬戸内の島々の自然や文化、歴史を同時に体感するというスタイルで実施し、地域活性化に向けた取り組みが着実に根付いてきているようです。芸術祭2022は春、夏、秋の三会期に分かれて開催されましたが、今回まわった中で、本島、高見島、伊吹島は秋会期のみの開催だったようです。瀬戸内国際芸術祭を見るのは今回が初めてで会場は広範囲にわたり、限られた日数では全部は回れませんが、天候に恵まれ、美しい自然と集落の風景を満喫しながら、アートを見て回れる楽しい旅となりました。
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1.一日目(11月2日(水))、小豆島
5時25分、タクシーで新横浜駅へ。新横浜駅には崎陽軒以外に弁当屋はなく大したものは置いていない。ホームのキオスクで焼き鯖寿司を買う。6時には新横浜始発列車が出る。新横浜6時18分発のぞみ1号に乗り、9時9分岡山駅着、ホームで仁たちと合流。
レンタカーを借り、9時30分出発。フェリーの出航までに時間があるので、烏城二の丸駐車場に駐車して、9時55分、岡山市立オリエント美術館に入る。建築は岡田新一の設計。内部のコンクリートはつり仕上げがすごい。駐車場に戻り10時45分出発。
カーナビの誘導がおかしく新岡山港で多少迷ったが、小豆島行きのフェリー乗り場には2台目に着く。11時40分新岡山港出航。カフェには大したものはなくオリーブドーナツとコーヒーを買って昼食とする。瀬戸内海は穏やかで多くの島々の変化を楽しめる。
土庄港周辺
12時50分土庄港着。アートノショーターミナル(土庄フェリーターミナル。アート、トノショー(土庄)を組み合わせた命名のようだ)で検温。ここの吹き抜けにsd02 POROPORO:コシノジュンコ、2022年:両極が存在することで調和を生み出す「対極の美」を提唱する。人間が作る「合理」、自然が作る「波紋」を表現。港の岸壁にsd01 太陽の贈り物:崔正化、2013年:オリーブで名高い島の玄関口に、オリーブの葉を王冠に仕立てた彫刻を設置。すぐそばの観光センターで瀬戸内国際芸術祭2022のガイドブックを買う。
アートノショーターミナルの方に引き返すと入り口近くに赤い犬の彫刻やコシノジュンコの絵手紙の碑がある。その先を進むとsd03 再び・・・:金景暋、2019年:島をかたどった土台に垂直に立つ半円部分は太陽と月をイメージし、いつまでも続く自然の豊かな小豆島を表現した。
エンジェルロード
土庄港を出てエンジェルロードへ。干潮時に島へ通じる道。ハート型の板やホタテ貝に恋人たちが誓いの言葉を書いて木に結んでいる。潮の満ちてくるのが早く、帰りには一部潮の差してきた部分があった。島へ渡れたのはラッキーだった。駐車場の売店でソフトクリームを買う。女の子が好みそうな色どり。14時5分出発。
迷路の町周辺
旧町役場並びの電話局前の駐車場に14時10分到着。目の前に世界一狭い海峡としてギネスブックに登録している土渕海峡がある。幅は最小9.93m。旧町役場前の部分には海峡をまたぐ形で観覧用のステージが設置されている。このあたりの土庄本町は「迷路の町」として知られる。昔ながらの町並みが残る入り組んだ道は、一説には瀬戸内海にいた海賊から町を守るために迷路のように造られたという。旧町役場にsd42 立ち入り禁止:土井健吏、2022年:「立ち入り禁止」の看板及び柵やロープを各所に設置することで、日常の風景を変え、人々の自由な創造と感情を顕在化させる作品。旧町役場の前庭の片隅に古い石灯篭がある。
その横の迷路の町入口から南西に進み突き当りを左折して進む。途中妖怪美術館が3館もあった。やがて左手の柘榴の実が美しい空き地にsd40 La dance:ソピアップ・ピッチ、2022年:リサイクルショップから買い集めたアルミ製品が、木の幹や根、枝に叩き込まれ、百日紅の樹がかたどられている。マティスの絵「ダンス」に因んで作品を円形に配置した。
そのまま進むと人形が並んでいる西光寺門前に出る。横の五重塔が見える小路は風情がある。ここで右折し、西に向かって曲がりくねった道を進む。大通りを渡り、先に進むとsd04 迷路の町~変幻自在の路地空間~:目、2016年:家屋の外壁を延長させ、建物の内部に洞窟のように延ばされた迷路を制作。真っ白な蟻の巣のような空間。平衡感覚がおかしくなる。なかなか面白い体験。
この脇の道を北に進み突き当たって左折するとsd41 ともだち:スタシス・エイドリゲヴィチウス、2022年:仮設的な部屋のドアの代わりに人の横顔が開く。沢山の部屋があり、横顔は無限の空間に向かっている。この先の町並みは修正したように整っている。少し行くとsd41 いっしょに:スタシス・エイドリゲヴィチウス、2022年:一人の人間がもう一人の人間を助けている。この助けは目に見えないこともあるが、ここでは目に見える。とぼけた味の表情が面白い。少し先で右折し、先に進むと広い道に出るのでここで右折。三叉路の角にある和菓子屋でどら焼きなど買う。15時25分出発。
肥土山・中山地区
肥土山・中山地区へ向かう。駐車場が見つからず、15時40分に中山のバス停近くで車を降り、先の駐車場へ向かった仁の戻りを待つ。目の前に「日本の棚田100選」に選ばれている「中山千枚田」が広がる。中山地区は「美しい日本の歴史的風土100選」や「にほんの里100選」、「名水100選」にも選ばれている、日本の原風景が残されている里山。少し戻った所に作品へ下る入り口がある。農道を下りしばらく行くとsd44 ゼロ:王文志、2022年:約4000本の竹を使って作られた直径約15mの球体。中に入り、自然と一体になる「調和の精神空間」を体験する。千枚田の風景を堪能しながら、心から安らげる時間を過ごす。タイトルには、過度な破壊がなかった原始に近い地球に戻れるようにとの思いが込められている。ゆっくりする時間が無くて残念だが、なかなか興味深い。
仁が先ほど見落としていた近くの駐車場へ車を回している間に中山農村歌舞伎舞台へ行く。16時35分に着いたが、残念ながら工事中。約350年前、お伊勢参りの帰りに、大阪で上方歌舞伎を見た島の人々が、歌舞伎の名場面を描いた絵馬や衣装を持ち帰り、神社に奉納したのが起源とされている。今でも役者はもちろん、義太夫、化粧師、舞台方など、すべて地区の人々を中心に上演されている。一時は島の中に30か所以上の歌舞伎舞台があったが、今は肥土山と中山の2ヵ所のみ。
先に進み土庄町アクティブ大鐸の駐車場から川沿いの道を歩いていくとsd06 猪鹿垣の島:斎藤正人、2013,16年:2013年に約200年前に築かれたとされる小豆島特有の猪鹿垣を復興。2016年にピラミッド型の石積みも加わった。小豆島の固有文化を再現する試み。駐車場に戻り16時50分出発。
屋形崎
17時10分屋形崎夕日の丘に着く。丁度日が沈むときできれいだった。少し上るとsd43 始まりの刻:三宅之功、2022年:「この世のすべては一期一会。そのとき、その瞬間の出来事。今ははじまりの時。」ひびの入った卵のオブジェ。展望台から夕陽を眺める。
小豆島町古江のベイリゾートホテル小豆島にチェックイン。一人につき5000円の全国旅行支援クーポンがつく。夕食はバイキング。魚が中心で似たような料理が多かった。ほかに地域利用クーポンが一人につき3000円付いたが今日明日中に使わなければならないというので食事後売店でオリーブオイル3本買って使い切る。
(つづく)