2022年越後妻有トリエンナーレ 1

はじめに

 5月4・5日に「大地の芸術祭、越後妻有トリエンナーレ2022」に出かけてきました。「越後妻有、大地の芸術祭」は、新潟県の南の端にある十日町市津南町からなる自然豊かな越後妻有地方を舞台として繰り広げられる現代美術の芸術祭で、2000年に始まりました。3年ごとに開催され、昨年開かれる予定がコロナ禍のため延期され今回が第8回目になります。私たちは最初から毎回鑑賞してきましたが、地元住民たちの協力を得て地域に根付いてきたように思います。保存されている作品もどんどん増えて大変な数になっています。今までは7~9月の夏季の開催でしたが、今年は4月29日~11月13日までの長期間となっています。開催者としては悲願の「通年化」への第一歩と位置付けているようです。

 今回は1泊二日の日程ですので十日町、中里、津南の3エリアに絞って回りました。ゴールデンウイーク直前のことで宿はどこも満員で、やっとニュー・グリンピア津南を予約できました。せっかく近くまで来たので二日目は秋山郷巡りをしてきました。新緑がきれいで大いに楽しめました。

1.一日目 5月4日(水)

 東京ではレンタカーが全部借り出されていて、やむなく高崎まで行って借りることになりました。東戸塚駅発5時31分に乗り、東京駅6時53分発あさま601号で高崎へ。東京駅で焼き鯖寿司と柿の葉寿司を買い、車中で朝食を摂る。高崎駅のホームで仁たちと合流、高崎駅西口でレンタカーを借りて8時15分出発。赤城高原SAで昼食用にカレーパンを買う。塩沢石打ICで降り、大沢山トンネル経由で妻有を目指す。

一日目行程

 大沢山トンネルを抜けたところに二つの作品がある。所々雪が残っている。T154マッドメン:小川次郎/日本工大小川研究室、2006年(作品番号、作品名:作者、設置年)。水遊びの時の休憩所として使うフォリー。土にセメントを混ぜた「土コンクリートを使用。人型を組み合わせた造形。T076モミガラパーク日本工大小川研究室+黒田潤三、2003年。米のモミガラをポリエステル樹脂に混入したブロックを組み合わせた造形。

T076モミガラパーク       左:T154マッドマン、右:モミガラパーク     t154:マッドマン内部

 山間の道を通って二ツ屋へ。廃屋を利用して作品がある。T214もう一つの特異点アントニー・ゴームリー(英)、2009年。壁、床、天井から682本のコードが張り巡らされ、中央には作者の身体のシルエットが浮かび上がる。この作品を見るのは初めてだが、なかなか迫力があった。

T214のある廃屋           T214もう一つの特異点             T325Kiss & Goodby

 県道82,国道117を経て土市駅へ。T325Kiss & Goodby:ジミー・リャオ(台湾)、2015年。内部に電車を描いたカラフルな絵が展示されている。駅前に検温ポイントがあり、検査済みの腕輪を渡されてはめる。これがないと入れないところがある。

 国道117,県道76を経て水沢市ノ沢へ行く。十二社神社、立派な墓地のそばに駐車し、作品のある廃屋へ。神社の周囲の木には着物を模した金銀の箔が巻き付けられている。T424ゆく水の家:椛田ちひろ、2022年。暗い室内に川の「流れ」が浮かび上がる。古い流れと新しい流れが同居して来た市ノ沢集落の歴史が表現されている。

十二社神社                  石碑、石仏                T424ゆく水の家

 山間の道を通り県道342を経て、あてま高原リゾート・ベルナティオの入り口前を通って国道353に出、越後田沢駅へ。N046が見つからず進むうちに信濃川に架かる宮中橋袂の黄桜の丘公園に着く。公園はウコンザクラが満開。ベンチで赤城高原SAで買ってきたカレーパンの昼食。ここにN006いちばん長い川:オル・オギュイペ(ナイジェリア)、2000年がある。16本の電柱に信濃川沿いに住む高校生の詩が刻まれている。

黄桜の丘公園               N006いちばん長い川             電柱に刻まれた詩

 黄桜の丘公園から交差点の向かいにN005妻有で育つ木:ホン・スンド(韓)、2000年。プランターごと吊り下げられた木が人間の生活をも暗示する。木は最初のものと違っているように思う。

 元来た道を引き返し宮中橋の袂で右に入るとN046遠くと出会う場所:内海昭子、09年がある。野の花の咲く道の先に、空へと続く梯子を立てた。地図が間違っていて探すのに一苦労。

ミオンなかさと周辺地図            N005妻有で育つ木          N046遠くと出会う場所

 ミオンなかさとは宮中島温泉の温泉施設。ここには沢山の作品がある。N001鳥たちの家:ジャウマ・プレンサ(スペイン)、2000年。鳥を介して天と地をつなぎ、光を反射して輝く、この地のシンボルとなる塔。N002ブルーミング・スパイラル:ジャン=フランソワ・ブラン(仏)、2000年。N001の足元に16個の花壇で構成された庭園。地元住民と採取した山野草を中心に作られている。冬が終わったばかりでまだ枯れていた。N003河岸の灯篭:CLIP、2000年。トイレで夜間には灯篭のように見える。N004暖かいイメージのために-信濃川:坂口寛敏2000年。石組のある子供たちが遊べる広場。

N001鳥たちの家、N002ブルーミング・スパイラル  N003河岸の灯篭  N004暖かいイメージのために-信濃川

 ミオンなかさとを出て宮中橋で右折し、県道49を進み長島あたりで左折して、県道528をしばらく行くとT173鉢&田島征三絵本と木の実の美術館田島征三、2009年・2022年がある。旧真田小学校の廃校を利用したもの。入り口付近の泉は羊の形をした鹿威し。春企画展「いのちのケハイ~木の実たちの発言」は野や山に健気にそして力強く生きている雑木たちの小さな命の魅力に着目。張り子の動く彫刻など新作が増え見ごたえがある。

羊型の鹿威し               流木による造形               切り板のオブジェ
流木と木の実の造形が階段を上がって2階へ   2階廊下、黒板の絵は最後の女先生      張り子と木の実
いろいろの張り子が浮かんでいる        動く張り子                張り子と木の実
ガマの穂のオブジェ          木の実の造形    自転車の車輪を回すと流木の人形が太鼓を鳴らす
木の実の造形。これの写真が作品        松ぼっくりの犬               カフェの展示

 県道49から国道253号へ出て右折、十日町橋を渡ってそのまま進むとT392みどりの部屋プロジェクト2021-2022:酒百宏一、2012-2022年がある。旧十日町市営スキハウスを利用したもの。1 階にブナの木を紙に写し取った大きな木のオブジェ。2階にはフロッタージュ(葉っぱの上に紙を置き、色鉛筆などでこすると葉っぱの形が写し取れる。乾拓の手法)で制作された緑色の葉っぱが部屋いっぱいに広がる。住民や参観者に制作してもらい、葉っぱが増えて厚みを増し、前回より迫力がある。

木のオブジェ            T392みどりの部屋プロジェクト        フロッタージュの葉っぱ

 国道117,県道178,506をたどるとT120うぶすなの家:2006年に着く。築100年を迎える茅葺屋根の古民家を陶芸家たちが「やきもの」の美術館として再生した。1階はレストランとして、地元の食材を使った料理を地元の女衆が提供する。T121風呂:澤清嗣、2006年。T122かまど鈴木五郎、2006年。T123表面波/囲炉裏:中村卓夫、2006年。表面波は仏壇を置くスペースに制作されたやきもの。T399うぶすなの白:布施知子、2022年。2階の三つの茶室に折り紙の造形。今回の新作で見ごたえがある。閉館間際のこともあり、残りはニンジンジュース1杯で完売とのこと。

T120うぶすなの家            T399うぶすなの白ー1            T399うぶすなの白ー2
T399うぶすなの白ー3           T399うぶすなの白ー3                 T121風呂
T122かまど                   T123囲炉裏                 T123表面波

 来た道を引き返すと右側の神明水辺公園に三つの作品がある。T112バタフライ・パビリオン:ドミニク・ペロー(仏)、2006年。能や狂言の舞台にもなる東屋。T020小さな家ー聞き忘れないように:伊藤嘉朗、2000年。対岸にある木を眺めるために造られた地下室。眺めるに値するような木はないんだけど。T021石の魚たち:荻野弘一、2000年。石の魚が水の中を泳ぐ様を表現。公園には河童の像が多数展示されている。

T112バタフライ・パビリオン      T112バタフライ・パビリオン               河童の像
T020小さな家ー聞き忘れないように     T021石の魚たち                 スノータワー

 国道117を引き返し、探したがなかなかわからず、北越急行ほくほく線のてまえの道を入ってやっと見つける。T423スノータワー:深澤孝史、2022年。新座集落では雪が共有地と芸術を育んでいると感じ、それを象徴するモニュメントを除雪具を使って建てた。

 国道117と県道340の交差点を右折するとすぐT025越後妻有里山現代美術館MonET原広司+アトリエ・ファイ建築研究所、2003年。「越後妻有交流館・キナーレ」として誕生。その一部が2021年に改装、改称された。入り口を入った吹き抜けの大空間にT221ゴースト・サテライト:ゲルタ・シュタイナー&ヨルク・レンツリンガー(スイス)、2012年がある。越後妻有で集めた物で人工衛星に見立てて制作したオブジェ。その下にT445パリャヌイツャ:ジャンナ・カディロワ(ウクライナ)。石でできたパン。

T221ゴースト・サテライト       T221ゴースト・サテライト           T445パリャヌイツャ

 2階へ上がって北側最初の部屋にT412movements:目、2021年。無数の小さな時計をムクドリの群れのように配置したインスタレーション作品。小さな点が無数に浮かんだ一見不思議な光景で、その点が小さな時計だとわかって驚く。隣がT411エアリエル:ニコラ・ダロ(仏)、2021年。シェイクスピアの戯曲「テンペスト」に登場するエアリエルからインスピレーションを受けて制作。機械仕掛けの吊り人形で、時間が来ると動き出すがあまり面白くない。その先にT227浮遊:カルロス・ガライコア(キューバ)、2012年。小さな銀色の紙が雪のように舞う。

T412movements         T411エアリエル             T227浮遊

 東翼に回るとT280ソイル・ライブラリー/新潟:栗田宏一、2012年。新潟県内12市町村の土を採取576種類を色別に展示。T415Force名和晃平、2021年。黒いシリコンオイルの液体が多数の糸状となって天井から床に常時落下し、床に黒い池を形成する。T416 16本のロープイリヤエミリア・カバコフ(旧ソ連/米)2021年。16本のロープに紙切れや木片など10個のメモが付けられた「ゴミ」がぶら下がっている。日常の営み、感情、あらゆる人々の生を記憶したいという作家の想いが反映している。

T280ソイル・ライブラリー/新潟        T415Force              T416 16本のロープ

 南翼はカフェ、物販店になっているがカフェの壁にT413遠方の声:中谷ミチコ、2021年が組み込まれている。平面に彫り込まれたところに彩色し、見る方向によって見え方が変わる。南に回ると中庭全体を使ったT352Palimsest:空の池レアンドロ・エルリッヒ(アルゼンチン)、2019年のヴューポイントがある。回廊に囲まれた池の水面に空と建物が反射する。池の床には鏡像の絵が貼り込まれており、描かれた実像と水に映る虚像、さらに実物の建物が重なり、建物の鏡像が複層化する。指定のポイントから見ると、それらがきれいに重なり合う。

T413遠方の声        T352Palimsest:空の池。指定位置から   T352Palimsest:空の池。他の位置から

 キナーレの道路側に作品が並ぶ。T026火を守る螺旋の蛇:星野健司、2003年。T027シルクの水脈:郷晃、2003年。信濃川流域の安山岩を円環状に配置。T028 3つの門のためのネオン:スティーヴン・アントナコス(ギリシャ/米)、2003年。T304モグラTV:開発好明、2015年。地下スタジオからトーク番組を放送。T305Three Travellers原広司+アトリエ・ファイ建築研究所

T027シルクの水脈         「現代雪まつり発祥の地」の碑          T305Three Travellers
T304モグラTV                 T304モグラTV            T026火を護る螺旋の蛇
T028 3っつの門のためのネオン    T067アスファルト・スポット      T067アスファルト・スポット

 キナーレを出て信濃川に向かうと妻有大橋のたもとにT067アスファルト・スポット:R&Sie建築事務所がある。駐車場と一体化したトイレ。

 県道49、国道117、県道402をへてニュー・グリンピア津南にチェックイン。GWの特別料金で高い。バイキングの夕食はいまいち。

 

(つづく)