14.十四日目(5月15日(木))、サンスーシー公園、ヴェルリッツ庭園
ポツダム、サンスーシー公園
プロイセン王フリードリヒ大王(フリードリヒ2世)が夏の離宮として建設し、実際の居城としたサンスーシー宮殿を中心に290haの広大な庭園にいくつかの宮殿や建物が点在する全体が公園として公開されている。世界遺産。
8時20分ホテル出発。8時30分公園の駐車場に到着。すぐ近くに風車がある。フリードリヒ大王が景観の邪魔になるとして撤去を命じたが、所有者の粉屋から生活を奪わないで欲しいと訴えられてそのまま残したという逸話がある。なかなか立派な風車で残してよかったと思う。そのまま進むとサンスーシー宮殿に着く。
サンスーシーとは、フランス語で「憂いのない」と言う意味でサンスーシー宮殿は日本語では「無憂宮」と呼ばれている。フリードリヒ大王の命による1745~47年建設のロココ様式の華麗な宮殿。全長100m、平屋建てと小規模で簡素なもの。時間の 関係で内部の見学はパス。宮殿は階段状のブドウ園の上に建てられており、下から見ると美しい。ブドウ園の下、東西に走る約2.3kmのアヴェニューには大きな噴水がある。当初は油圧ポンプの初期段階でうまく噴き上がらなかったようだが、100年後蒸気発電の発明で、やっと32mと高く吹き上げられるようになったとのこと。
ブドウ園の西に広がるルスト庭園の上に新広間がある。1747年にオランジェリーとして設計されたが、後に宮廷の迎賓館として改造された。新広間越しに風車が見える。
新広間から西に進むとオランジェリー(南国のオレンジなどを育てるための温室)がある。1851~60年建設のルネッサンス様式の建物。南面前には壮大なテラスが広がり、庭園へと続いている。
オランジェリーの西のアーチを潜ると、両側を高い木に囲われた芝生の道がまっすぐに伸びており、突き当りに展望台が建っている。庭園全体の木が大きく伸びて存外眺望は効かない。
少し戻って南に入ると凧の家がある。4層の建物で、上の3層は吹きっ晒しで展望台のようにも見える。庭園内を進みアヴェニューに出て西に向かうと正面に新宮殿が見える。
新宮殿は1763~69年建設のバロック様式の堂々たる大宮殿。
新宮殿からシャルロッテンホーフ庭園内を南東に向かって進む。左手に友情の寺院や遠くのローマ風浴場を見ながら進むと、やがてシャルロッテンホーフ宮殿に出る。1826~29年建設の新古典主義様式の建物。周囲はインド風の景観を取り入れた英国風の庭園で、宮殿は「庭園の中の宮殿の傑作」と言われる。
池沿いに北に進むとローマ風浴場がある。シンケルの設計で宮廷庭師たちのための住宅として使われていた。
道なりに東北方向に進むと中国風茶室に到る。18世紀に流行した中国趣味が現れている。
庭園をさらに東に進むとフリーデン教会。正面の壁には窓がなく、3っつのアーチからなる入り口から入ると回廊に囲われた教会前の中庭で、中央には大きなキリスト像が立っている。回廊を右に行くと回廊に囲まれた別の中庭があり、左に行くと教会の北側が面する池に回廊が突き出ており、池に突き出たテラスまである。
教会から北に進んでアヴェニューに出ると東側に入口の門とオベリスクが見える。このオベリスクがアヴェニューの東端で西の端の新宮殿まで約3.2kmの大通りが伸びている。
噴水のあるプールの先に絵画展示館がある。1755~63年建設のドイツ最古の美術館で、内部はロココ様式の装飾が施されている。
絵画展示館の西からサンスーシー宮殿のテラスに出、東側から北側に回る。宮殿の玄関入口はこちら側にあり、前庭を半円形に回廊が取り巻いている。
ざっと見て回るだけで4時間半、良く歩いた。駐車場に戻り、13時出発。デッサウのヴェルリッツ庭園を目指す。
ヴェルリッツ庭園
デッサウの東約18km、ヴェルリッツ城とイギリス式庭園は、エルベ河畔の風景と一体化した調和美で世界遺産に登録されている。ドイツおよび大陸ヨーロッパにおける最初で最大級のイギリス式庭園。1764年から40年かけてアンハルト・デッサウ侯レオポルド3世フリードリヒ・フランツによって創設された。112haに及ぶ広大な庭園には、城館や並木道、小川に架かる美しい橋などが配置されている。
14時45分到着。駐車場近くの入り口から入る。石楠花の花が満開の小道を進むと渡し場がある。平底舟は川に渡されたロープを手繰りながら進む。島を経由して対岸に渡り、ヴェルリッツ湖の湖岸沿いに進むと、右手に聖ペトリ教会の塔と城館が見える。湖から離れて北へ小川沿いに進むとゴシックハウスの前に出る。
ゴシックハウス⓮は、1774年建設開始のネオ・ゴシック様式の建物。レオポルド3世が魅せられた2つの建物をそれぞれ模した2つのファサード(正面)を持っている。
ゴシックハウスから北に進み、自然木を組み合わせた手摺のある橋を過ぎると牛小屋⓰の前に出る。レンガ造と石積みを組み合わせたなかなか趣のある建物。
牛小屋から西に進むと道の両側は色とりどりのツツジ、サツキが満開。開けたところからはゴシックハウス、ヴィーナス寺院が遠望できる。やがて、右手芝生の向こうにフローラ(花の女神)寺院⓲が見えてくる。建物などの点景に向けて視線を誘導する工夫が随所に凝らされている。
やがて花の劇場⓳と名付けられた花壇に到る。種々の花が咲き乱れきれい。その続きにフローラ寺院⓲がある。
フローラ寺院を過ぎて北に進むとロマンティックな個所㉔と呼ばれるところへ出る。バスタイの岩峰を思わせる石を組み上げた柱が並び、これを吊り橋でつないでいる。小川には草を積んだ舟がもやっていた。何処も草がきれいに刈り取られているが、これらの草を運ぶのに水路が利用されているようだ。
ここを過ぎるとすぐにヴィーナス寺院㉖の前に出る。8本の円柱に支えられた円形の建物の中央にヴィーナスの像が据えられている。
ヴィーナス寺院から東に進むと石積みの建物の上に円柱を建てたモニュメント㉗がある。さらに進むと至る所に水路が巡っており、種々の橋が架かっている。視界が開けたところでは聖ペトリ教会や城館が遠望できる。
やがて根の家㉝に出る。正面入り口が2本の根のある木で支えられているからかと思案するがよく分からない。ここを過ぎるとすぐ渡し舟の乗り場に着く。対岸にはローマのヘラクレス・ヴィクトール神殿(世界遺産)をモデルとしたユダヤ教会堂㊺が見える。
渡し舟で対岸に渡り南西に進むとヴェルリッツ庭園の中心部分で種々の建物が集まっている。正面奥にある聖ペトリ教会㊻は12世紀のロマネスク様式の教会堂を1804~09年にゴシック・リバイバル様式で建て替えた物。左手にあるグラウエス・ハウス㊽は王妃の宮殿。教会の右隣にあるのはレンガ造の厩舎㊼。
その手前が夏のホール❸/調理場❹。この横を西に進むと城館❶正面の芝生の広場に出る。城館は1769~73年建設のローマン・リバイバル様式とネオ・パッラーディオ様式の折衷様式。
城館から西に進むと遊覧船の乗り場に出る。遊覧船は手漕ぎのボートだが、大勢の人が向かっていた。ここから南に進むと右手に入口にあった南洋パビリオン➓、図書館❾が見える。湖の端辺りでヴェルリッツの町の城門の前に出る。
ヴェルリッツの町の城門はガストホーフ・ツム・アイヒェンカンツという宿屋を兼ねた建物で、1788年に営業開始した。ゲーテを始め多くの文学者、科学者が宿泊している。
駐車場は城門の目の前だが、通り越して入り口の辺りのパーゴラ⓫などの写真を撮り、駐車場へ引き返す。庭園巡りは花も美しく楽しかった。2時間半かけて歩いたが、まだほんの一部分。17時15分出発。
通り過ぎる旧東ドイツの町は何処も寂れた印象で、人通りがほとんどない。クヴェトリンブルクの町は一方通行の道が多く、ホテルに着くのに一苦労。ホテル・クヴェトリンブルガー・スタットシュロス泊。ホテルの食堂で夕食。
(つづく)