旅の絵日記:2009年フランス 5

4.五日目(9月22日(火))、ラ・ロック・ガジャック、ドンム、カステルノー城、ベナック城、サルラ、エリニヤック・マナー庭園

五日目旅程:モンパジェ→ラ・ロック・ガジャック→ドンム→カステルノー城→ベナック城→サルラ→エリニャック・マナー庭園→カルサ・アラック

 8時30分からの朝食前にホテルの写真を撮る。ホテル・エドワード1世は19世紀初めに建てられた商人の館を改装したもの。濃霧で周りがぼやけて見える。

 9時濃霧の中を出発。今日はドルドーニュ渓谷の美しい村や城などを回る予定。

ドルドーニュ渓谷関連地図        ホテル・エドワード1世玄関              ホテル中庭

ラ・ロック・ガジャック

 ドルドーニュ川沿いの切り立った崖を背に輝く河岸の村。外敵を防ぐために崖にへばりつくように家が建てられており、洞窟の砦がある。「フランスの最も美しい村」認定。

 9時45分、駐車場に着く。霧の中の眺めは幻想的。駐車場近くに上の 道への登り口があるが、川岸の道を歩いて城館へ。城館の先にも崖に張り付くようにして少し家があるが、城館が村のはずれのようだ。

川沿いの町並み              上の道への登り口             ここから降りて来た

 城館の少し手前から坂道を上り上の道へ。崖が迫り、片側の家は崖に張り付いて立っている。開いている店をのぞいたら奥行きは浅く、岩がむき出しになっている。村の建物はおおむね石造で屋根は赤い色の石で葺いているのが多いようだ。川側は所々町並みが切れて下の建物の屋根越しにドルドーニュ川の流れが見える。

城館                   上の道への登り口                   上の道
上の道、崖が迫っている           崖を背にした建物                 洞窟の砦

 やがて崖の洞窟に築かれた砦が見えてくる。岩肌を掘って12世紀に築かれたもの。そこへ上る木製の階段は崖から張り出して取り付けられている。登り口近くにジャン・ダルドの館の裏口が見えてくる。

砦へ上る階段                  上の道              砦への階段登り口近く

 ラ・ロック・ガジャック出身の哲学者ジャン・ダルドの館は15世紀に建てられたもの。螺旋階段の円錐状の屋根を持つ塔はペリゴール地方の典型的な造り。水彩スケッチはこの館を描いたもの。

ジャン・ダルドの館                        「ラ・ロック・ガジャック」 F0 水彩

 ジャン・ダルドの館を過ぎてしばらく行くとノートルダム教会の前に出る。1330年に最初の建築がなされたが、宗教戦争の際に村の郊外にあった教会が破壊されてしまったため、貧者救済の慈善病院の礼拝堂を用いるようになったとのこと。ロマネスク様式の建物で、この地方の特徴的な造りとして鐘が正面の壁に取り付けられている。

岸壁に張り付いた店の内部         ノートルダム教会                  教会内部
教会内陣外側              ノートルダム教会、下から          少し霧が晴れて来た

 駐車場に戻るとガバールと呼ばれる遊覧船が停泊している。舳先近くに帆を持つ面白い形の船だ。19世紀には近くのドンムのワインをボルドーへ運ぶ交通手段として活躍したが、現在は遊覧船として利用されている。水彩スケッチはこの船を前景にラ・ロック・ガジャックの村を描いたもの。絵の中央奥の大きな建物は城館。

 駐車場のそばの広場に市場らしきものがあらる。最後の頃になって大分霧が晴れて来た。

「ラ・ロック・ガジャックと帆船」 F0 水彩                           市場?

ドンム

 ドルドーニュ渓谷にそびえ立つ標高250mの断崖の上にあるバスティード(計画都市)。アルビジョア十字軍(異端アルビ派(カタリ派と同義)討滅の戦い)の際、1281年にフィリップ3世によって建設された。百年戦争中、1347年にイングランド軍に制圧され、支配下に入ったが、幾度かの争奪戦の後、1437年にフランスに返還された。黄色味を帯びた石造の家屋が建ち並ぶ中世の面影を残す町並みで、「フランスの最も美しい村」認定。

 11時、ロデ広場の駐車場に着く。ここには貨幣打刻人の館が建っている。水彩スケッチはこれを描いたもの。

ドンム地図                               「ドンム、ロデ広場」 F0 水彩

 大通りを進むとラ・アール広場に出る。17世紀建築の旧市場が目に付く。ラ・アール広場の真下に約450mの鍾乳洞の地下洞窟が広がっており、百年戦争宗教戦争の時代には住民の避難場所として用いられていた。旧市場は現在は地下洞窟の入り口になっている。

大通り                   ラ・アール広場                   旧市場

 旧市場の向かいに15世紀建築の司令官の館がある。現在は観光案内所のある村役場になっている。その隣にノートルダム・ド・アサンプション教会がある。13世紀から続く教会は宗教戦争の際1589年に破壊されてしまった。現在の建物は1622年にその石を再利用しながら建てられたもの。

 教会の先を進むとドルドーニュ川を望む展望台に出る。ドルドーニュ渓谷の絶景が眼下に広がり、先ほど訪れたラ・ロック・ガジャックの村も遠望できる。

左:ノートルダム教会、右:村役場         教会内部            ドルドーニュ川の眺め

 展望台から村の城壁の外の「断崖の道」と名付けられた道を進むと 公園に出る。公園の切れたところにある王の風車で引き返し、ポール・レクルス通りを進み、アウグスティヌス修道院を過ぎたあたりで脇道に入り、ボス門通りで右折して進むとボス門に出る。13世紀の城壁、ボス門、これから行くコンボ門、トウール門は当時の姿をとどめている。

展望台                      断崖の道                    公園
王の風車                アウグスティヌ修道院                ボス門通り

 13世紀の城壁が残る城壁通りを進むとコンボ門に出る。コンボ門から中に入って右手に進むとトウール門に出る。

ボス門                     城壁通り                   コンボ門

 トウール門は13047年にテンプル騎士団員の監獄として用いられた。約70人のほどが収容され、彼らの落書きが残る。ロデ広場に戻り、12時出発。

コンボ門内側                トウール門内側                 トウール門

カステルノー

 ドルドーニュ渓谷にそびえ立つ中世の軍事要塞。現在は中世の戦闘の様子を伝える武器博物館となっている。12世紀にはすでにあったとされる。13世紀にカタリ派の領主の居城となったが、アルビジョア十字軍で敗れ、天守閣と城壁を残して破壊された。その後再建され、百年戦争ではイギリス軍の拠点となった。フランス革命以降は廃墟化したが、1966年、歴史的建造物に設定され、復元、1985年、現在の城が完成した。

 12時30分、駐車場に着く。入り口を入って少し上ると15世紀の城館と16世紀の円筒形の砲兵の塔が目の前にそびえ立つ。その下で回って城門から入る。左手は15世紀の低部囲壁、右手の円筒形の防御装置は15世紀の物。城館の中庭を囲む中堤は13世紀の物。

カステルノー城                    入り口付近             カステルノー城説明図
城館と砲兵の塔                  城門                 城門と低部囲壁

 上部中庭の横には稜堡、奥に小城塞がある。稜堡は16世紀のもので屋上に投石器などが置かれている。稜堡の上からドルドーニュ川の向こうに敵対関係にあったベナック城が霞んで見える。眼下にドルドーニュ川が見え、カヌーを楽しむ人たちがいる。

城館中堤と手前円筒形の防御装置        小城塞                 稜堡屋上の投石器
稜堡からの眺め、ベナック城遠望        ベナック城          ドルドーニュ川でカヌー遊び

 低部中庭の向こうに城館がある。円筒形の防御装置との間にある簡易迂路を上がって城館中庭へ。片隅に井戸がある。さらに上がると城館への入り口があり、眼下に城下町の様子が眺められる。

城館              城館中庭への簡易迂路           城館中庭
城下町見下ろし               城館への入り口          武器弱物館の展示、巨大弩

 城館の中は武器博物館。中世の様々な武具が陳列されている。巨大弩はちょっとした大砲の感じ。厨房が残っているが、リブボールトの立派な部屋。

武器の展示                    武器の展示                   厨房

 13時20分、出発。城下町を歩いたが、中世のままの感じ。デザインの面白い本屋の看板があった。城のある岩山の麓で写真を撮っていたら、おばさんが出て来てパンにフォアグラを塗ったものの試食を勧める。美味しかったので一瓶土産に買う。車を止めたのが、フォアグラを作っているところだったらしい。

天守閣                     城下町                   本屋の看板
カステルノー城と城下町                          「カステルノー城」 F0 水彩

ベナック城

 ドルドーニュ川を見下ろす断崖上にそびえる。最初の主塔と二重の城壁が築かれたのは1115年。イングランド獅子心王リチャード1世が第3次十字軍遠征の帰途、この城を占領し、城主だったとのこと。百年戦争ではフランス側の拠点となった。数々の戦乱を経て20世紀初めには廃墟同然となったが、1961年に現在の所有者が完全修復を条件に1フランで購入し、莫大な私財を投じて見事に修復され、一般公開されている。

ベナック城遠望                             「ベナック城への道」 F0 水彩

 ベナック城のある岩山の麓、ドルドーニュ河畔にあるベナック・エ・カズナックは魅力的な中世の村で、「フランスの最も美しい村」認定。石畳の急斜面の道を上ると古城にたどり着くが、車で上の駐車場まで行く。

 駐車場のある広場に面して村の城門がある。黄褐色の石造の家並みが続く道を進む。陶工の看板なども面白い。やがてベナック城の城門前の広場に出る。現在の所有者は城門の2階に住んでおられるとのこと。

村への上の入り口                陶工の看板                    城門

 城門を入ると内外二重の城壁に囲まれた外郭。右手に進み、内壁の城門を入ると広い内郭の下の段に出る。左前方に城館が建っている。右手にある斜路を上がると内郭上の段の広い芝生が広がる。右手前方の端部に13世紀建造の礼拝堂があり、これに向かい合って左手端部に城館が建つ。この間の城壁からは眼下にドルドーニュ川と流域の眺めが一望できる。先ほど訪れたカステルノー城も見えるはずだが霞んでよく見えない。

城門付近                    城門内側             外郭と内郭への入り口
内郭に入った所。正面:城館          礼拝堂                       城館

 城館は14世紀建造の物。城館に入ったあたりは窓も少なく、昔のまま再現するというので電灯もないので暗いが、上の居住部分になると結構明るい。大広間は城の中心だけあってボールトの広い部屋。

ドルドーニュ川                  居室                     大広間

 獅子心王リチャード1世の部屋は家具なども入ってそれなりの雰囲気。天守閣のテラスからは内郭の様子や断崖に建つ城、ベナック・エ・カズナックの村の様子がよく分かる。

獅子心王リチャード1世の部屋          天守閣              ドルドーニュ川と礼拝堂
内郭、右手に入口からの斜路が見える。   断崖上の城と城下町                  天守

 リブボールトのある立派な周り階段を下りると大きな厨房がある。

 城館から出て入り口を振り返ったら、跳ね橋を引き上げる綱が見えた。さすが、何重にも防御が施されている。

周り階段                     厨房           城館入り口、跳ね橋がある。

 駐車場へ戻る途中、村はずれに円筒形で石葺きの小屋があった。南イタリアアルベロベッロのトウルッリと同様の造りか?

 14時40分駐車場出発。麓で城を背景に村の写真を撮る。東北方向のサルラに向かう。

サルラ

 13~14世紀に商業の中心地として繁栄した。百年戦争で美しい中世の街並みは破壊されたが、その後、建築の修復や増築などによって、独特の建築物が生まれ、中世からルネッサンス、17世紀の建物が混在して残る町並みで知られる。1962年にマルロー法(歴史的町並み保存法)の適用第一号として見事に復元された。大観光地で人出が多い。

 15時30分、南側、市城壁外の駐車場に着く。東側に裁判所が見える。城壁の門を潜りトーニイ通りを進むと右手に観光案内所があり、町の地図をもらう。

サルラ地図                    裁判所                 トーニイ通り

 そのすぐ先がペイロー広場でサン・サセルド大聖堂やそれに向き合う形でモンテニューとの親交で知られる詩人ラ・ポエシの家がある。ルネッサンス様式で16世紀の建築。

鶏肉の看板               サン・サセルド大聖堂           右手:ラ・ポエシの家

 大聖堂は16~17世紀建造のゴシック様式。右側の側廊横から出て修道院の中庭を進むと泉の中庭に出る。井戸のそばの狭い道を進むと大聖堂内陣裏手の墓地に出、共同墓地として17世紀に建てられた「死者の角灯」と呼ばれる塔がある。

大聖堂身廊                  大聖堂側廊                   泉の中庭
死者の角灯                 大聖堂内陣の裏側             モンテニュー通り

 墓地の庭を出たところがモンテニュー通り。これを横切り、墓地から続くシルヴァン・カヴェル通りを進むと突き当りに四角く赤い傘をベランダにかざした趣のある建物が現れた。水彩スケッチはこれを描いたもの

「サルラの町並み」 F0 水彩                  初審裁判所通り。右手に行くと初審裁判所

 この建物の西側のアルブッセ通りを進み、突き当たって右手の初審裁判所通りを少し行ってから右折して進むと初審裁判所がある。16世紀の建物で階段室の明り取りを兼ねた鐘楼が特徴的。

 その先をぐるっと回って元の道の戻って進み、フェネロン通りに出たところで左折。やがて右手に少し引っ込んでジェラール館の入り口が見える。16世紀の建物で中庭を囲んで建っている。ルネッサンスのギャラリーなどがあるが時間が無いのでパス。

初審裁判所                ジェラール館入り口               ジェラール館

 その先すぐの所に町の中心リベルテ広場がある。毎週土曜日この地方で最も活気のある朝市が開かれることで知られる。前方奥にサン・マリー教会。14~15世紀のゴシック様式の建物で、現存するのはリブボールトのある2区画と鐘楼だけだが、有名な建築家ジャン・ヌーヴェルによって改修されオープンマーケットとなっている。

 広場の東側には市庁舎が面している。

リベルテ広場、サン・マリー教会      リベルテ広場、町役場              リベルテ広場

  サン・マリー教会の横を通り、内陣裏側で右折するとガチョウ広場がある。サルラはフォアグラが有名で、サルラのシンボル「ガチョウ」の像がある。その先すぐの左手にプラモン館(領事館)がある。14~16世紀の建築でサルラで最も注目すべき邸宅の一つ。領事通りを進むと聖母の泉がある。ほかにも元サン・マリー教会、木組みの家などもある。

ガチョウ広場                 ガチョウ像                  プラモン館
聖母の泉                 元サン・マリー教会                木組みの家

 リパブリック通りからジャン・ジャック・ルソー通りに入る。円柱のある入り口は17世紀のバロック様式の礼拝堂か? やがて死刑執行人の塔に着く。18世紀の建物で当初は「新しい塔」と呼ばれていたが、死刑執行人の住居だったのでそう呼ばれるようになった。

ジャン・ジャック・ルソー通り、右手:礼拝堂?   荘園:死刑執行人の塔           ボエシ通り

 ハングマン塔で左に入って狭い道を進み、ボエシ通りに出ると前方にサン・サセルト大聖堂の鐘楼が見える。真っ直ぐ進まず左折し、古い建物の残るルシアン・デ・マルヴィル広場、アンドレ・マルロー広場などを経てサン・サセルド大聖堂のあるペイロー広場に出る。駐車場に戻り、17時20分出発。

ルシアン・デ・マルヴィル広場?     アンドレ・マルロー広場              ペイロー広場

エリニヤック・マナー庭園

 デザインの美しさと独創性で卓越した歴史的なモニュメントであり、フランス庭園のグランプリを受賞している。樹木を刈り込んで造るトピアリー庭園として有名。18世紀に造られたが、19世紀に当時の流行で英国式庭園に改造されたのを、現在の所有者の父が約40年前に元に戻すことを決意し復元した。マナー・ハウス(小領主の館)は17世紀に建築されたもの。

エリニャック・マナー庭園案内図                 「エリニャック・マナー庭園」 F0 水彩

 17時45分駐車場に着く。入り口から入ると広い芝生の広場があり、トピアリーのアーチ型の門から入り小路を進むとツノギの小道①と交差する。右手には林があり、高い生垣で囲われた小道が放射状に延びている。正面の小道の突き当りには中国風の東屋が見える。反対側はフランス式庭園へと続くツノギのトピアリーが両側に並ぶ芝生の小道。

前庭                 庭園入り口から続く小路         ツノギの小道:中華風東屋

 最初の小道をさらに進むと芝生の細い広場があり、左手の高生垣の中央あたりに休憩用のパビリオンが建っている。

 さらに進むと高い生垣に囲まれた小さな円形の広場に出る。中央に花瓶が据えられ、生垣には窓が開いている。ここが花瓶の小路➁の始点。花瓶の小路には尖頭のあるアーチが並んでおり、終点あたりに英国式庭園の名残③が見られる。

ツノギの小路                花瓶の小路の始点    花瓶の小路横の庭と休憩用パビリオン
花瓶の小路                英国式庭園の名残               マナー・ハウス

 この先に広場に面してマナー・ハウス➃が建っている。マナー・ハウスの反対側の広場の境の両脇にロマネスク様式のチャペルがあり、石段を上るとフランス式庭園⑥に出る。

 マナー・ハウスの前を進むと魚の池⑤があり付属建物が建っている。魚の池の脇の道を進むと魔法のテラス⑨に出る。ここからフランス式庭園、マナー・ハウスの正面を眺める軸線になっている。

フランス式庭園          マナー・ハウス前広場の端部とチャペル         魚の池前の建物
魚の池                     魚の池                     魚の池

 その先にホワイト・ガーデン⑧があり、庭園全体に詩情と軽快さを加えている。

 広い芝生の広場に戻る。庭園の高生垣の中央あたりのトピアリーアーチは休憩用パビリオンを正面から眺める軸線上にあり、庭園の見どころの一つとなっている。水彩スケッチはこれを描いたもの。

魔法のテラスからマナー・ハウスを見る     ホワイト・ガーデン          ホワイト・ガーデン

南に向かい、ドルドーニュ河畔カルサ・アラックのホテル・ラ・ヴィラ・ロマネにチェックイン。ホテルで夕食。エスカルゴは殻に入って出てくると思っていたら小さな壺に入って出て来た。蓋のラスクに乗せて食べたら美味しかった。

前菜のエスカルゴ                肉料理                    デザート

 

(つづく)