10.十日目(9月27日(日))、モレ・シュル・ロワン、フォンテーヌブロー宮殿、シャンティイ城、ロワイヨモン修道院、ガイヤール城
7時からの朝食を済ませ8時5分ホテル出発。
モレ・シュル・ロワン
フォンテーヌブローの森の端、ロワン川とセーヌ河の合流点にある美しい中世の町。画家のシスレーが晩年を過ごした町でシスレーの美術館がある。町に入る少し前の道路でフリー・マーケットが開かれており、大勢の人が出ていた。町には入らず河畔で写真を撮っただけ。ロワン川に架かる橋、町の城門ブルゴーニュ門、ノートルダム教会など町の風景が素晴らしい。パステル画、水彩スケッチはこれを描いた。
フォンテーヌブロー宮殿
もともとはパリの王族がここの森で狩りをして楽しむ狩り小屋だった所へ、フランソワ1世からルイ16世まで7代の王が次々と建物を継ぎ足してきた。12~18世紀までの建築様式が見られる。中世封建時代のカペー王朝からナポレオン3世まで、フランスの歴代王権の歴史が凝縮されている。フォンテーヌブロー宮殿の内装や庭はルネッサンス後期に栄えたマニエリスム様式をフランス風に解釈したもの。世界遺産。
9時15分駐車場に着く。門を入った所が「白馬の中庭」。ナポレオン1世がエルバ島へ流刑されることになった時、この中庭で近衛兵たちに別れを告げた。そのため中庭にある馬蹄形の階段は「別れの階段」と呼ばれる。
内部に入れる時間までしばらく建物の外回りを見て回った後、館内へ。見学できるのは歴代王たちの居住空間だった所。
「絵皿の回廊」はテラスだった場所を回廊としたもので、壁には食器セットがはめ込まれている。
「フランソワ1世の回廊」は国王の居住棟と三位一体礼拝堂をつなぐ部分にある。フレスコ画や化粧漆喰の装飾が優美なマニエリスム様式の傑作。
「三位一体礼拝堂」の天井はすべて宗教をテーマとした絵画で飾られている。テラスは 王と王妃が毎朝ミサに参列した場所。
「舞踏会の広間」は王が祝宴を催した場所で、柱はフレスコ画の装飾で埋め尽くされており、大きな窓ガラスで明るい空間。
「ディアナの回廊」はアンリ4世の王妃のために造られた。ナポレオン3世によって図書館に改装された。
「皇后の寝室」は16世紀末から1870年代まで歴代の王妃の寝室として使用した。
「玉座の間」は歴代の王の寝室であったのをナポレオン1世が玉座の間に改装した。
「皇帝の寝室」はナポレオン1世の寝室。
先ほどテラスを見た「三位一体礼拝堂」の1階を見てから外に出る。
かって国王たちの祝祭の舞台だった「鯉の池」の南側を通ってフランス式庭園へ回る。16世紀にフランソワ1世とアンリ4世によって整備されたもの。花壇には種々の花が咲き乱れており、広大な芝生の向こうに宮殿の建物群が連なっている。
庭園の端に池があり、これに連なって運河が伸びている。周囲のフォンテーヌブローの森は公園となって豊かな自然が広がっている。庭園端の道路を馬車が走っていた。11時15分出発。
シャンティイ城
シャンティイ城はグラン・シャトーとプチ・シャトーに分かれており、建設は16世紀に遡る。グラン・シャトーはフランス革命期に最初の建物が破壊された後、1870年代に修築されたものだが、修築部分もルネッサンス様式で修復されている。湖に浮かぶ様に建つ壮麗な城。城館は持ち主だったコンデ公の所有していた膨大な絵画コレクションを公開するコンデ美術館になっている。
正面の大階段を上がると「宮内長官のテラス」㉓で左にシャンティイ城・コンデ美術館㉑、右に「宮内長官の城」㉕がある。時間の関係で城館の見学はパスして庭園を巡る。115ヘクタールの広大なフランス式庭園。「宮内長官のテラス」から眺めると見渡す限り庭園が広がっている。
正面にザ・リースと呼ばれる円形の池がある。ここから右に進むと中央の庭園との境にある「ドルイドの運河」⑨と「モルフォンデュの運河」⑫の交点に出る。
「モルフォンデュの運河」に沿って進み、石の橋を渡った所がル・アモー・ドウ・シャンティイと呼ばれる英国式庭園。1772~74年にかけてコンデ公爵15世ジョセフが造らせたシノワーズ様式に触発されたもの。この中に擬似集落⑬がある。木組みの家屋などを見ながら北東に進むと六角形の池⑮に出る。大小二つのカスケードが見られる。
この池から東西に伸びる大運河に沿って西に進み中央の庭園に出るとシャンティイ城、宮内庁長官のテラスなどの全容が眺められる。
さらに先に進むと英国式庭園があり、「ヴィーナスの寺院」④や「大男の橋」①、パビリオンなどがある。
「白鳥の湖」⑤の脇を通って南東に進むとシャンティイ城の濠⑲に出る。水彩スケッチはこの水面に浮かぶようなシャンティイ城を描いたもの。
シャンティイ城の西に隣接して競馬場があり、立派な馬の博物館の建物が見える。元は大厩舎㉒で18世紀に建てられたもの。当時は馬240頭、猟犬600匹が飼われていた。今でも競馬用に馬がここで飼育されている。14時30分出発。
ロワイヨモン修道院
オワーズ=ペイ・ド・フランス自然公園の中にある緑に包まれた修道院。1228年に聖ルイ9世の命により建設され、1235年に完成した。イル・ド・フランス最大の修道院。
15時到着。入り口の門を入り庭に出ると丸い池と木々の向こうに修道院の建物が見える。教会ではコンサートが行われることになっていて内部は見られなかった。
修道院の中庭を囲む回廊は堂々たるもの。回廊の西側にはかってゴシック様式の旧教会が建っていたが今は回廊に接した外壁の丸窓と北西の柱が唯一残っている。柱の高さは48.7m。15時30分出発。
ガイヤール城
1154年アンジュー伯アンリ・プランタジュネがイングランド王ヘンリー2世として即位、アンジュー帝国が成立してフランス王を圧倒するようになると両者の間に争いが始まった。ヘンリー2世を継いだイングランド王獅子心王リチャード1世と、フランス王フィリップ2世は一時休戦し、ともに第3回十字軍に参加したが、1193年一足先に帰国したフィリップ2世はリチャード1世の不在の隙をついて、ノルマンディの要衝ジゾール城を占領した。1194年に帰国したリチャード1世とフィリップ2世は激しく争い、1195年ジゾール城をフィリップ2世に割譲することで和平が成立した。リチャード1世はジゾール城に代わるノルマンディ防衛の拠点として1196~98年にガイヤール城を築いた。戦の天才と言われたリチャード1世が築いた難攻不落の大城塞だが、リチャード1世死後の1204年にフィリップ2世の包囲によって占領された。リチャード1世の後継者ジョン失地王は政治・戦争両面での不器用さからプランタジュネ家のフランスの領地を失ってしまった。
17時5分到着。向かいの丘の上に城の廃墟の全貌が見える。配置図通りに左に前衛城塞A、右に主城が見える。主城は外廓Bと内郭Cからなる。城壁で囲まれたところが内郭で高さ5mの天守閣Dがある。水彩スケッチはこれを描いたもの。
谷の路へ下ってから城に上る。修理工事中の内郭に入る。天守閣は青空天井。城に関する資料が展示されている。両軍の勢力図を見るとピンクはプランタジュネ家(英国王家)の領地、青がフランス王家の直轄地、黄色がフランス王諸侯の封土。プランタジュネ家がフランスにおいていかに広大な領地を所有していたかが分かる。
内郭を囲む懸華装飾塀は防衛に当たって死角をなくすための工夫で当時の最先端の築城技術だった。見た目にも特徴的な印象を与える。内郭から眼下にセーヌ河が眺められる。外廓は城壁の一部が残っているだけ。
主城と前衛城塞は空堀で隔てられているが、今は1本の路が通じている。前衛城塞には防御用の塔の遺跡が残っている。
城の外の斜面に展望台があり、セーヌ河とレザンドリーの町の風景を楽しむことが出来る。
18時30分出発。N14号線からA15号線に入ると渋滞となる。N184号線に入る予定が見落とし、パリに近づくにつれてますます渋滞がひどくなる。飛行機に間に合わないかとやきもきしたが、A1号線に入って流れ出す。ドゴール空港についてほっとしたのもつかの間、レンターカーを返す場所が分からず、探すうちに空港を出てパリ方面に向かう高速道路に入ってしまい、慌てて引き返す。今度は空港関係施設の地域に入ってしまい、グルグルあてどなく彷徨う。日も暮れて心細いことこの上ない。やっと空港関係者らしい人を見つけ、道を尋ねてどうにか第二ターミナルに着く。警官に呼び止められ、危険だからハイビームの使用禁止を注意される。幸い警官にレンタカー返却の場所を教えてもらいやっと到着。かれこれ1時間もむだにし、どうにか22時30分のチェックインに間に合う。
空港の免税店で土産物を買うが、23時閉店間際であわただしい。幸い日本女性の店員がいて助かる。目当てのカマンベールチーズは大量にあったが、先ほど売り切れて同種のものが3個あるだけとのこと。やむを得ないのでそれを求める。
23時35分ドゴール空港出発。9月28日18時成田空港到着。
おわりに
中部のロワールから南西部のペリグー、東部のブルゴーニュ、パリ周辺のイル・ド・フランスと9月18日~28日まで11日間かけて回ってきた。初めてのフランスは見どころ満点で変化に富んだ風景や文化遺産、美味しい料理を満喫できた。英仏百年戦争ゆかりの地も多く、歴史に興味を持つ小生にとっては単なる観光以上の楽しみがあった。例によって地方の小都市を巡る旅だったが、それだけに中世そのままの町並みなどを楽しめた。初日と最終日に車の渋滞に悩まされたが、それ以外は大したトラブルもなく順調に旅が出来たのは幸いだった。
予告
次は「旅の絵日記:2012年フランス」を執筆します。本来なら「旅の絵日記:2010年ニュージーランド」のはずでしたが、書き溜めたスケッチがどうしても見つからず後回しにします。